お金に関する細かい相談はファイナンシャル・プランナー、
資産運用を任せるならIFAが適任

著者:萬 真知子

相続全般の相談窓口になるファイナンシャル・プランナー

相続の相談先というと、まず税理士や弁護士、行政書士、司法書士といった「士業」が思い浮かぶかもしれませんが、他にも注目したい専門家がいます。一つが「ファイナンシャル・プランナー(FP)」です。

FPは大きく分けると2種類。金融機関や不動産会社など企業内でFP資格を活かして働く企業内FPと、独立系のFPです。独立系のFPは有料で個人の相談に応じてくれます。守備範囲は広く、身近な家計相談から保険、年金、相続まで、個人のお金に関する悩みに総合的に応じます。

それぞれ得意分野があり、相続相談を看板にしているFP事務所もあります。「うちは相続税がかかるのか」「そもそも相続対策が必要なのか」「相続の基本的なことを教えてほしい」といった相続全般の相談窓口になります。

ただしFP資格だけではできることが限られます。相続の相談をよく受けるFPであれば、税理士、弁護士などとのネットワークがあるはずですから、必要に応じて紹介してもらえるでしょう。税理士や弁護士の中にFP資格を保有する人もいます。

FPを探すには、日本FP協会のウェブサイトにある「CFP(*)認定者検索システム」を活用するのが一つの方法です。都道府県別、男女別、年齢、得意分野などで全国のCFPから、自分の希望に合った人を探せます。

(*)上級FP資格。

独立系ファイナンシャル・アドバイザー「IFA」は資産運用の専門家

もう一つ注目したい専門家が「IFA(アイ・エフ・エー)」です。比較的新しい業態のため耳慣れないかもしれませんが、IFAとは独立系のファイナンシャル・アドバイザーのこと。Independent Financial Advisorの頭文字を取ってIFAといいます。銀行や証券会社など特定金融機関に属さない中立的な立場で、資産形成のアドバイスや管理・防衛等のサポートをするのが役割です。証券会社で経験と実績を積んだ人がIFAに転じるケースが一般的です。

欧米では金融資産のホームドクター的な位置づけで、資産運用の相談はIFAにするのが一般的。投資信託の7~8割がIFAを通じて購入されているとも言われています。

日本では内閣総理大臣の認可を受けた金融商品仲介業者を指します。2003年に証券取引法改正で「証券仲介業」として誕生し、2007年に「金融商品仲介業者」と名称が変わりました。金融仲介業の仕組みは図表のとおり。IFAは1社あるいは複数の金融機関と業務委託契約を締結し、顧客はIFAを通じて金融機関で金融商品を購入します。金融機関は顧客から受け取った販売手数料や信託報酬の一部を業務委託報酬としてIFAに支払います。これがIFAの収入源となるので、顧客は相談料が不要です。この点は相談料のかかるFPとは異なります。ただし、中には相談料を設定しているIFAもいるので予め聞くとよいでしょう。

「顧客本位のアドバイス」と「一生のつきあい」がIFAの特徴

IFAならではの大きな特徴の一つは、前述のとおり特定の金融機関に所属していないため、顧客の立場や要望に沿った親身な提案がしやすいことです。金融機関に所属していると営業ノルマが課されるため、顧客のニーズを最優先できない場合もあるのが現実です。IFAは金融機関と顧客の仲立ちをしますが、金融機関からノルマを課せられるわけではないので、顧客本位のアドバイスが可能になるのです。

もう一つの特徴は、顧客と長いおつきあいができること。転勤などがある金融機関のファイナンシャル・アドバイザーとは異なり、IFAには異動がありません。一度顧客になった人には、資産形成の相談を通じて「一生見守り続ける、寄り添い続ける」ことができるのがIFAです。生涯のおつきあいになるからこそ、信頼を裏切るようなことはできないと語るIFAもいます。

まだ歴史の浅いIFAではありますが、既にIFAを引退した親からIFAの子へ顧客が引き継がれたケースもあるといいます。同じIFAが親子2代にわたり相談相手を務めるというケースも見受けられるそうです。

夫から妻へ、親から子へ引き継がれるIFA

相続におけるIFAの一つの役割が、まさにこの顧客の引き継ぎです。典型的なのが、70代になりそろそろ相続が気になり始めた夫が、妻のためによき資産運用のアドバイザーを探したいというケースです。妻に金融商品の知識がほとんどなくても夫が残した金融資産を上手に活用できるように、適切なアドバイスしてくれるような、信頼できるプロフェッショナルを探している場合にIFAが一つの解となります。

金融資産を遺す相手が子の場合でも同様です。親の相談先のIFAが子のアドバイザーにもなるというケースもあります。親と長年つきあい、信頼を寄せられていたIFAなら、親がなぜその財産を子に遺したのか、その思いまで伝える役割も担ってくれるようです。

相続対策の段階でもIFAの役割はあります。例えば親が子に一定の資産を生前贈与した場合、親の相談先のIFAが子のアドバイザーにもなり、贈与資産の運用法の相談に応じるといった具合です。子が20~30代だと金融知識が乏しいことも少なくありません。顧客の親からの要望で子を対象にした金融の勉強会を開くこともあるといいます。生前贈与を通じて、次世代の金融リテラシーを育むこともIFAの役割の一面だといえます。

「人生100年時代」は金融資産の相続にも変化が

IFAは顧客の金融資産全体を見ているので、相続に備えてこの資産はそろそろ解約して現金化したほうがいい、この資産は子に贈与したほうがいいといったことも提案します。これまでは70代を過ぎた頃から積極的な運用は控えて、金融資産をほぼ現金化して亡くなるケースが多かったそうですが、人生100年といわれる時代となり、徐々に変化してきているといいます。高齢になっても運用を続ける傾向が出てきているのです。

寿命が長くなれば必要なお金も増えます。手持ちの金融資産をなるべく長持ちさせるためには、運用しながら取り崩すことが重要になってきます。すると亡くなったときに現金ではなく金融商品のまま残る可能性もあります。そのときに相続人となる配偶者や子はどうやって引き継げばよいのか、そうしたシーンでもIFAの出番がありそうです。

自分に合ったIFAを見つけるには

ではIFAを見つけるにはどうすればいいのでしょう。一つ窓口になるのがネット証券です。現状、楽天証券とSBI証券がIFA事業を展開し、それぞれのウェブサイトを通じて契約先のIFAを紹介したり、取引形態にIFAコースを設けていたりします。他の手段としては、知人等にIFAとのおつきあいのある人がいれば紹介してもらうのも手です(なお、ネット証券でIFAコースを選択する場合、株式や投資信託にかかる手数料は通常の取引より割高になります)。

IFAは個人経営の場合と会社組織に所属の場合があります。会社組織の場合には複数のIFAが所属しているため、日頃からお互いに情報交換をすることでIFAは最新の情報を得ることができます。また一定以上の規模のIFA会社の場合、社内で商品等の勉強会が開催されることも頻繁なため、所属しているIFAは最新の金融商品等の情報に触れられます。こうした規模のメリットもIFAを選ぶときの参考になりそうです。

自分の希望もはっきりさせておきましょう。男性と女性のどちらがいいのか、どのぐらいの年齢がいいのか、どんな分野に強い人がいいのかといった条件を絞り込んでおくと、見つかりやすくなるはずです。IFAは証券業界からの転職組が主なので、年齢は経験や実績の指標となる傾向があります。しかし顧客の年齢にもよりますが、年齢の高いIFAはおつきあいできる期間が限られる恐れも。一定以上の金融知識と経験を持つIFAを望むなら40代ぐらいが最適だといえそうです。

性別や年齢などが希望どおりでも、一番大事なのは相性です。資産運用の相談をするということは、これからどんな生き方をしたいのか、将来のプランを明らかにすることでもあります。それだけに、相性が合って心から信頼できそうなIFAを選ぶことが大事です。手間はかかりますが、何人か条件に適った人と面談してみることをお勧めします。

取材協力=株式会社アイ・パートナーズ フィナンシャル

著者:萬 真知子