プロフェッショナル’S EYE

『養子縁組による5つのメリット・4つのデメリット』

2017.03.01

by コンパッソ税理士法人

養子縁組といってもさまざまです。
家(家系)のため、お子様がいらっしゃらない夫婦、再婚相手の連れ子などいろいろな理由・目的があります。また、相続税の節税として養子縁組を検討される方もいらっしゃいます。
当社への相談者の中でも、養子縁組を検討される方が増えてきていますので、今回は相続という観点から、養子縁組のパターン別に5つのメリット・4つのデメリットの具体例をご紹介します。

※メリット④、デメリット②およびデメリット③の試算においては、課税財産が3億円かつ法定相続分での分割を仮定しています。

養子縁組 パターン①

メリット①  相続税の基礎控除額の増加
4,200万円 → 4,800万円

メリット②  生命保険の非課税枠の増加
1,000万円 → 1,500万円

メリット③  死亡退職金の非課税枠の増加
1,000万円 → 1,500万円

メリット④  累進税率の緩和
例)課税財産が3億円
母  40%→40%
長男 40%→30%

メリット⑤  相続の一代飛ばし
孫(長男の子)を養子としているため相続を一代飛ばすことができます。

デメリット①  相続税額の2割加算
孫(長男の子)は算出された相続税額に20%上乗せした税額を納めなければなりません。

デメリット②  相続税額が増える可能性
このパターンの場合は該当しません。

デメリット③  相続争いの可能性
実子が一人かつその実子の子を養子としているため揉める可能性は低いと思われます。

デメリット④  租税回避行為に該当する可能性
認知症等で意思表示ができない場合にされた養子縁組等は、租税回避行為に該当するものと指摘され上記メリットを受けられない可能性があります。

養子縁組 パターン②

メリット①  基礎控除額の増加
3,600万円 → 4,800万円

メリット②  生命保険の非課税枠の増加
500万円 → 1,500万円

メリット③  死亡退職金の非課税枠の増加
500万円 → 1,500万円

メリット④  累進税率の緩和
このパターンの場合、母の税率は変わりません。

メリット⑤  相続の一代飛ばし
孫を養子としていないため該当しません。

デメリット①  相続税額の2割加算
甥・姪は算出された相続税額に20%上乗せした税額を納めなければなりません。

デメリット②  相続税額が増える可能性

●養子がいない場合
母は法定相続分である193,500,000円までは配偶者の税額軽減の特例を適用すれば納税額が0円となります。
父の兄弟の法定相続分である64,500,000円にかかる部分が納税額となります。

●養子がいる場合
母は法定相続分である126,000,000円までは配偶者の税額軽減の特例を適用すれば納税額が0円となります。
甥および姪の法定相続分126,000,000円にかかる部分が納税額となります。

デメリット③  相続争いの可能性
父の兄弟が複数いる場合は、養子縁組が無ければ遺産を取得できたと主張して争いになる可能性もあります。

デメリット④  租税回避行為に該当する可能性
認知症等で意思表示ができない場合にされた養子縁組等は、租税回避行為に該当するものと指摘され上記メリットを受けられない可能性があります。

養子縁組 パターン③

メリット①  基礎控除額の増加
4,800万円 → 5,400万円

メリット②  生命保険の非課税枠の増加
1,500万円 → 2,000万円

メリット③  死亡退職金の非課税枠の増加
1,500万円 → 2,000万円

メリット④  累進税率の緩和
例)課税財産が3億円
母  40%→40%
長女 30%→20%
次女 30%→20%

メリット⑤  相続の一代飛ばし
孫(長女の子)を養子としているため相続を一代飛ばすことができます。

デメリット①  相続税額の2割加算
孫(長女の子)は算出された相続税額に20%上乗せした税額を納めなければなりません。

デメリット②  相続税額が増える可能性
このパターンは該当しません。

デメリット③  相続争いの可能性
養子縁組が無ければ長女、次女ともに4分の1の法定相続分でした。しかし、養子縁組をしたことにより長女・長女の子が合わせて6分の2、次女が6分の1の法定相続分となります。次女からすれば遺産の取り分が減ったことになり、次女の了解を得ていない場合は争いとなる可能性は極めて高いと思われます。

デメリット④  租税回避行為に該当する可能性
認知症等で意思表示ができない場合にされた養子縁組等は、租税回避行為に該当するものと指摘され上記メリットを受けられない可能性があります。


代表的な例として3つのパターンを、「普通養子」を前提としてご紹介しました。
(養子には実親との親子関係を継続したままの「普通養子」と実親との親子関係を断ち切って養子となる「特別養子」があります。)
養子縁組を考える際、相続対策としてだけでもメリット・デメリットを十分考慮した上で、対策する必要がありますので、税理士などの専門家にご相談することをおすすめします。

by コンパッソ税理士法人