公式コラムオカネの最前線
2019年3月まで使える教育資金一括贈与非課税制度
2017.09.19
著者:馬養 雅子
祖父母から孫への贈与は、シニアの持つ資産を若い人に移転させることによって消費の拡大につながるうえ、祖父母にとっては相続税対策になる。それを後押しするために2013年4月にスタートしたのが「教育資金一括贈与非課税制度」だ。この制度を使って非課税で贈与できるのは2019年3月31日までとなっている。
孫への贈与が1500万円まで非課税に
非課税の対象となるのは、30歳未満の人が直系尊属から受ける贈与で、実際には祖父または祖母からの贈与が想定されている。贈与された資金の使いみちは教育費のみ。それ以外の目的で使えないよう、金融機関に孫名義の教育資金口座を開設し、そこに祖父・祖母が贈与する資金を入金。孫(未成年のうちは親)は教育費の領収書と引き換えに、口座から資金を引き出すという仕組みになっている。
非課税の対象となるのは、授業料、施設整備費、修学旅行費など学校へ直接払う教育費で、非課税となる金額は孫1人につき1500万円。このうち、学習塾や習い事など学校以外の教育サービスに対して支払うものについては500万円まで。
この制度の受け皿として広く利用されているのが信託銀行の「教育資金贈与信託」で、いずれの信託銀行でも大ヒット商品となっている。一般の銀行や信用金庫、一部の証券会社にも、教育資金贈与商品を扱うところがある。

教育資金一括贈与非課税制度の仕組み
資金の使途は教育費に限られる
実際には、祖父・祖母が孫に教育費や生活費を必要になるつど渡す場合には、贈与税はかからない。また、よく知られるように、1人につき年間110万円までの暦年贈与も非課税だ。にもかかわらず、この制度が利用されているのは、贈与した資金の使途が教育費に限られムダ遣いされる心配がないからだろう。
また、最初に手続きをしてしまえば、あとは都度贈与や暦年贈与より手間がかからないのもメリットだ。自分の老い先が長くないと感じる人が短期間でまとまった資金を贈与するケースもあるだろう。
教育資金贈与商品を扱う金融機関が、通帳に孫への手書きメッセージを入れられるようにするなど、祖父・祖母ゴゴロをくすぐる工夫をしていることも、ヒットにつながっていると考えられる。
生前贈与には綿密なプランニングが必要
すでにこの制度を利用して孫に贈与した人も多いと思われるが、贈与した金額が1500万円に達していなければ追加で贈与することができる。また、孫が増えたり、贈与した孫としていない孫がいたりすれば、新たに贈与することも考えられる。
ただし、贈与を受けた孫が30歳になったとき、口座に贈与された資金が残っていたら贈与税の課税対象となる。また、いったん贈与したものを返してもらうことはできないので、贈与しすぎて祖父・祖母の老後の生活費が不足するようでは困る。贈与するなら、孫の年齢に応じて30歳までに使いきれる金額で、かつ、贈与する祖父・祖母の今後の生活に支障をきたなさない額にする必要がある。
相続税対策として教育資金を贈与するのであれば、相続財産の評価額や想定される相続税額などを試算したうえで、贈与する金額を決めなければならない。
この制度を利用する・しないにかかわらず、生前贈与は計画的に行うことが大切だ。
著者:馬養 雅子