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民間介護保険の選び方

2017.11.06

著者:馬養 雅子

公的介護保険は、原則として65歳以上の要介護と認定された人がサービスを利用でき、その費用の1割を自己負担する仕組みだ。限度額以上のサービスを利用したり、公的介護保険の対象でないサービスを利用したりしたときの費用は全額自己負担になる。
また、要介護認定者は右肩上がりで増えており、公的介護保険財政が厳しくなっているため、2015年8月から、所得が一定以上の人は費用の自己負担割合が2割になった。さらに、3割負担の導入も検討されており、介護にかかる費用は増える傾向にある。

こうした介護費用の負担に備えるために、民間の保険会社の介護保険を利用することが考えられる。所定の要介護状態になったら、介護一時金や介護年金が受け取れる保険だ。公的介護保険で給付されるのは介護サービスであるのに対し、民間の介護保険では現金が給付されるので、使いみちが自由なのが特徴だ。
すでに多くの生命保険会社が介護保障の保険を発売しているが、保障内容は商品によって異なる。民間介護保険を選ぶときのチェックポイントを押さえておこう。

受け取るのは一時金か年金か

民間の介護保険の給付は、所定の要介護状態になったとき、
・介護一時金が支払われるタイプ
・介護年金が支払われるタイプ
・介護一時金と介護年金が支払われるタイプ
の3つに分かれる。

一時金は、手すりの取付けなどの住宅改修や介護用品の購入、有料老人ホームの入居一時金などに使える。介護年金は、毎月の介護費用に充てることができる。
介護一時金の額は商品によって50万円~2,000万円まで幅がある。介護年金は30万円あるいは60万円という商品が多い。
一時金か年金か、給付金額がいくら必要かなどは、要介護になったとき在宅で介護を受けるのか有料老人ホーム等に入居するのかによって違ってくる。
なお介護年金は、支払われる期間が10年などのように決まっている有期型と、要介護状態が続く限り支払われ終身型がある。介護状態が続いているのに給付される介護年金が途切れる可能性のある有期型より、終身型のほうが安心だろう。

一時金・年金が支払われる条件

介護一時金や介護年金が給付される基準は、
・保険会社の独自基準
・公的介護保険連動
・独自基準と公的介護保険の併用

の3タイプがある。
独自基準は保険会社によって異なり、やや複雑なこともあるので、加入前によく内容を確認することが大切だ。また、所定の要介護状態が90日あるいは180日継続した場合に一時金や年金が支払われるという形になっていることが多い点にも注意したい。

公的介護保険に連動しているタイプは、一時金・年金を受け取れる基準が「要介護1」と認定されたらというものもあるが、「2」あるいは「3」が多く、中には「要介護4以上」という商品もある。基準となる要介護度が低いほうが、一時金・年金が受け取れる可能性が高いといえる。

介護年金は、要介護状態が改善するなどして条件を満たさなくなっても給付が続くのか、あるいは停止するのかを事前に確認しておきたい。

介護以外の保障の有無

保障内容については、
・介護一時金・介護年金のみ
・死亡保障や一定期間要介護にならなかった場合に支払われる健康お祝い金などがある
のいずれかとなる。
要介護にならずに亡くなることを考えると、介護一時金・介護年金のみの掛け捨てタイプより、死亡保障やお祝い金などがあるもののほうがよいかもしれないが、その分、保険料は高くなる。

保険期間は定期か終身か

保険期間は
・定期
・終身
の2タイプ。
定期は「10年」など年満期型と、「85歳まで」などの歳満期型がある。年満期型はその期間が終了すると更新できるが、年齢が上がっているぶん保険料は高くなる。要介護になる可能性は年齢とともに高くなることを考えると、終身タイプが安心ではないだろうか。

保険料をいつまで払うか

険料の払込期間は
・一定年齢まで
・終身
の2タイプある。
一定年齢で払込みが終わるほうが、保険料は高くなる。
なお、介護年金の受取開始以後は保険料の払込みが免除されたり、免除される特約がつけられたりするものもあるので、この点も要チェックだ。

保険料はどのくらいか

保障が手厚いほど、また介護一時金・介護年金の受け取り条件が緩いほど保険料は高くなる。加入時の年齢が低いほうが保険料は安いが、介護保険への加入を考えるのは介護が気になり始める50代以降だろう。そうなると、保険料は1万円~数万円になる。
民間の介護保険を利用するときは、「死亡保障は手当してあるので掛け捨ての介護保障のみに絞る」、「介護保障は最小限に抑えて不足分は貯蓄で備える」といった選択肢も含めて検討するとよいだろう。

著者:馬養 雅子