公式コラムオカネの最前線
毎月分配型人気は終わった?
2017.12.11
著者:馬養 雅子
毎月分配型人気は終わった?
日本で始めて毎月分配型ファンドが設定されたのが1997年。それ以来、約20年にわたって毎月分配型ファンドは日本の投資信託の主流となっている。
特に退職したシニア層の厚い支持を集めてきた。分配金で年金収入を補ったり分配金をお小遣い代わりに使ったりできるからだ。
その毎月分配型ファンド人気にかげりが見えてきたのではないかという指摘がある。純資産残高ランキング上位の毎月分配型ファンドから資金が流出しているのだ。
流出が目立つのは、先進国や米国のリート(不動産投資信託)に投資するタイプのファンド。
2016年末から2017年はじめにかけて分配金を引き下げたのが理由だと考えられるが、金融庁が一因だとする声もある。
金融庁が毎月分配型にダメ出し
金融庁は、顧客本位の業務運営を行うことを金融機関に強く求めており、投資信託については毎月分配型を問題視している。分配金というのは、運用によって得られた利益をそのファンドの保有者に還元するもので、分配を行うとファンドの資産は減る。それを毎月行っている毎月分配型ファンドは、年1回あるいは半年に1回分配するファンドに比べて運用効率が下がる。
ファンドの保有者は、分配金を受け取らずにそれで同じファンドを買える口数分買って再投資することによって保有口数が増え、その繰り返しで資産額を増やすことが期待できる。これを複利効果という。
毎月分配型ファンドは運用効率が低く、分配金を受けとると複利効果が働かない。したがって長期の資産形成には適さないというわけだ。
金融庁の指摘を受けて、金融機関が毎月分配型ファンドの販売を抑えていることが、資金流出につながっていると見る向きもある。
金融庁は、若い世代が長期・分散・積立投資で資産を形成していくことを重視している。確かに若い世代には毎月分配型ファンドは向かない。
ただ、シニア層には、何年も先を目標にした資産形成より、毎月の分配金に一定のニーズがあることは否めない。
元本取り崩しや高リスクも
だが、毎月分配型ファンドには別の大きな問題点がある。
分配金は本来、ファンドの運用成果によって金額が変動する。だが、毎月分配型ファンドを保有している人は毎月一定額を得ることを期待している。そのため、多くの毎月分配型ファンドは、運用が思わしくなくても分配金を減らすことができず、不足分をファンドの資産の中から出している。このような元本を削った分配を続けていくと、ファンドの資産は減少し、ファンドの時価である基準価額が下がっていく。
毎月分配金が出ているからと安心していると、ファンドを買ったときより基準価額が大きく下がっていて、いつのまにか含み損を抱えているケースも出てくる。
もう1つの問題点は、より高い分配金を出すために大きなリスクをとったファンドが出てきたことだ。例えば、リーマンショック後に登場した「通貨選択型」と呼ばれるファンドは、海外のハイ・イールド債券やリートから得られる利益のほかに、金利差や為替差益を上乗せすることで、従来のシンプルな毎月分配型ファンドより高い分配金を出すことで人気を集めた。だが、分配金の原資が債券やリートから得られる利益、金利、為替の3つであるということは、3つのリスクを抱えていることになる。
実際に、当時最も人気があったブラジル・レアル建ての米国ハイ・イールド債券ファンドは、その後のレアル安で分配金が大幅に下がり、基準価格も純資産残高も大きく減っている。
ただ、元本の取り崩しやリスクの高いファンドをもたらしたのは、毎月分配型ファンドを買っている投資家だと見ることもできる。投資家が、分配金が下がったファンドを売ってより高い分配金を出すファンドに乗り換えるから、運用会社・販売会社は元本を取り崩しても同額の分配金を出そうとするし、より高い分配金を出すファンドを設定する。
その結果、投資家が損失を被ったとしても、それは自分で自分の首をしめたのだといえるかもしれない。
今回の海外リートファンドから流出した資金も、より分配金の高い豪ドル債券ファンドに流れていると見られ、金融庁の指摘はあっても高分配指向は変わっていないようだ。
しかし、そろそろ分配金だけに着目した投資から卒業してもよいのではないだろうか。
分配金の必要性・健全性をチェック
毎月分配型ファンドを保有している人は、そもそも自分にとって毎月分配が必要なのかどうかをしっかり考える必要がある。
必要であるならば、受け取っている分配金の原資を確認しよう。元本を取り崩しているようなファンドは保有する意味がない。分配金の原資に金利差や為替差益などが含まれるタイプのリスクの高いファンドだったら、それだけのリスクをとれるか、あるいはとる必要があるのか検討する。
分配金が必要なら、元本を取り崩して分配することのないETF(上場投資信託)や日本のリート(J-REIT)を利用することも考えたい。
著者:馬養 雅子