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生命保険信託の活用法

2017.12.25

著者:馬養 雅子

生命保険信託の活用法

死亡保障の生命保険は相続対策に活用できる。
受取人を指定して契約するため、特定の人に法定相続分とは別に遺産を遺すことが可能で、受取人は契約者(=被保険者)が亡くなるとすみやかに保険金が受け取れる。
例えば、相続させる財産が少ない相続人を受取人に指定しておけば、遺産分割の不公平感を軽減することにつながる。相続人に相続税の負担がある場合は、保険金を納税資金に充てられる。

保険金の受け取り方を指定できる

ただ生命保険は、受取人が死亡保険金を受け取ることまでは指定できるが、受け取った人がその保険金をどう使うかまでは指定できない。例えば、受取人が未成年、障害者、認知症だったりすると、受け取った保険金をきちんと管理できず、浪費したり金銭トラブルに巻き込まれたりすることがあるかもしれない。
そのような場合は「生命保険信託」で保険金の受け取り方まで決めておくと安心だ。

生命保険信託は、保険会社と生命保険契約を交わすときに、信託銀行とも信託契約を交わしておく。契約者が亡くなったとき、生命保険会社から支払われた死亡保険金は信託財産として信託銀行で管理され、信託契約にもとづいて受取人に支払われる。

例えば、未成年者や障害のある子、認知症の配偶者などを受取人とする生命保険と生命保険信託によって、受取人に毎月一定額が支払われるようにするといった使い方ができる。

次の受取人を指定できる

遺言は相続人に遺産を遺すところまでしか指定できないが、生命保険信託はその先の遺産の行き先まで指定できるという特徴もある。

例えば、配偶者を第1受取人、配偶者の介護をしている妹を第2受取人に指定しておく。契約者が亡くなったら第1受取人である配偶者が毎月一定額を受け取り、配偶者が亡くなったら残った信託財産を第2受取人である妹が一括して受け取るといった形だ。

子どものいない夫婦がおい・めいを第2受取人にしたり、再婚している人が先妻の子を第2受取人にすることも考えられる。第2受取人に公益法人などを指定し、残った財産を寄付することもできる。

最低死亡保険金額が決まっている

生命保険信託を扱っているのは今のところプルデンシャル生命とソニー生命の2社で、どちらも利用にあたっては、申込時に信託契約手数料が5万円(+消費税)がかかる。

プルデンシャル生命は死亡保険金受取時に、死亡保険金5000万円までの部分に3%(100万円に満たない場合は100万円)、5000万円超1億円までの部分に2%、1億円超の部分に1%の手数料がかかる。信託期間は最長25年、最低死亡保険金額は3000万円。

ソニー生命は、死亡保険金受領時に2%の手数料がかかり、信託期間は最長50年、最低死亡保険金額は1000万円となっている。

生命保険信託を利用するにあたっては、保険金額と毎月の受取額を慎重に決める必要がある。受取人以外の相続人の相続割合・相続財産なども含めたトータルな相続プランの中で考えることも大切だ。


*手数料はいずれも消費税別。2017年7月現在。

著者:馬養 雅子