公式コラムオカネの最前線

資産運用にも必要な“出口戦略”

2018.01.09

著者:馬養 雅子

資産運用にも必要な“出口戦略”

シニア世代の中には、複数の金融機関で預貯金以外の金融資産を多数保有していながら、それをきちんと管理できていない人が少なくない。
その時々の判断で金融商品を買ったり、金融機関にいわれるままに買ったりしていったために、自分でもどんな金融商品を保有しているの把握できていないというケースも見かける。その結果、気づかないうちにリスクを取りすぎている可能性もある。

年齢が高くなるにつれて金融商品の管理は難しくなってくるし、そのまま相続を迎えた場合、相続人が金融商品の把握や処分に困ることもあるかもしれない。
60歳代の後半くらいからは、資産を運用して大きなリターンをねらう必要性もなくなってくるだろう。そこで、少しずつ金融商品を売却・換金して資産運用を終わらせていく“出口戦略”を考えたい。

保有している金融商品を洗い出す

まず、取引のあるすべての金融機関ごとに、保有している金融商品を洗い出そう。金融機関から送られて来ている取引報告書か金融機関のホームページにある保有資産のページをプリントアウトして、一覧表にする。
そのうち、買ったときより価格が下がった状態が続いている、いわゆる“塩漬け”のものや、中身のよくわからない投資信託などがあれば売却候補となる。

毎月分配型の投資信託は、分配金が出てるからと安心してはいけない。元本を削って分配金を出しているものも多いからだ。基準価額をチェックしてみて、だんだんに下がっているものは手放すほうがいいかもしれない。

同じようなタイプの投資信託を複数保有しているケースもある。例えば、米国あるいは先進国の低格付け債券(ハイ・イールド債)やリート(不動産投資信託)に投資するタイプなどにありがちだ。その場合は、低格付け債やリートの大きな下落に備えて、どれか1つを残してそれ以外は売却することが考えられる。

リスクの高いものから売却

資産別では、リスクの高いもの、つまり値動きの大きいものから売却していくのが基本だ。そうでないと、リスクの高い金融商品が残り資産全体としてのリスク度が高くなってしまうからだ。

株と債券では株のほうが値動きが大きく、日本株と外国株では為替の影響を受ける外国株のほうが値動きが大きい。外国株でも先進国株と新興国株では新興国株のほうが値動きが大きい。
また、通貨選択型の投資信託の分配金には、ハイ・イールド債やリートなど投資対象である資産から得られる利益に、為替差益や金利差による収益が上乗せされており、こうした上乗せのない投資信託よりリスクが高い。

売却も時間分散

売却のタイミングを考えるのが難しければ、分散するとよい。株なら最低売買単位ごとに何回かに分けて売却する。投資信託は口数単位で解約できるので、金額を決めてそれに応じた口数で売却していく。
証券会社によっては、投資信託を毎月一定額ずつ解約・売却できるところもある。これを利用して、手間をかけずに少しずつ換金していくのもよいだろう。

もちろん、配当や株主優待を楽しみにしている株もあるだろうし、インフレに備えて資産の一部を投資信託で持っておく必要もある。そのように目的がはっきりしているものは保有し続けてかまわない。ただ、万一に備えて、どの金融機関で何を保有しているかを家族がわかるようにしておきたい。

著者:馬養 雅子