公式コラムオカネの最前線
5年目を迎えるNISA
2018.02.05
著者:馬養 雅子
2014年にスタートしたNISA(少額投資非課税制度)。金融機関にNISA専用の口座を開設すると、そこで購入した上場株式や株式投資信託については売却益や配当・分配金に税金がかからないという仕組みで、非課税期間は5年間。2014年に購入した株や投資信託は、2018年末に非課税期間が終了する。
非課税期間が終わるときの3つの選択肢
NISA口座で非課税期間の終了近くまで保有していた株や投資信託をどうするかについては、3つの選択肢がある。
①売却する
②NISA口座へ移管する(ロールオーバー)
③一般口座・特定口座へ移管する
・売却する
売却して得られた利益は非課税で受け取れる。購入時より値下がりしていて売却損失が生じた場合、それはなかったとみなされ、NISA口座や一般口座・特定口座での取引で得られた利益と損益通算することはできない。
・NISA口座へ移管する
保有している株や投資信託は、翌年のNISA口座に移管することができる。これは「ロールオーバー」と呼ばれる。
NISAの年間非課税枠は120万円なので、この範囲であればそっくりそのまま移管可能だ。購入したときに120万円以下だったものが値上がりして非課税期間終了時に120万円を超えていた場合でも、そのまま移管できる。
ただし、NISA口座へ移管すると、その年の非課税枠を消化することになる。例えば、2014年に購入して保有している株や投資信託の時価が100万円だとすると、それを2019年のNISA口座へ移管した場合、2019年に新規に購入できるのは20万円までとなる。
・一般口座・特定口座へ移管する
一般口座・特定口座へ移管して保有し続けることもできる。その場合、その株や投資信託の取得価格は、実際に購入したときの価格ではなく、移管したときの時価に変更されるという点に注意が必要だ。
一般口座・特定口座への移管は要注意
例えば、NISA口座で50万円で購入した株が80万円に値上がりしていたとすると、一般口座・特定口座に移管した場合、それは80万円で購入したこととされる。
その後、その株が100万円に値上がりしたときに売却したとすると、実際の売却益は「100万円-50万円=80万円」だが、NISA口座内での値上がり益は非課税なので、課税対象は「100万円-80万円=20万円」となる。
このように、移管時の価格が購入価格より高い場合は問題ない。
もしNISA口座で50万円で購入した株が移管時に30万円に値下がりしていたとすると、一般口座・特定口座に移管した場合、それは30万円で購入したこととされる。
その後、その株が80万円に値上がりしたときに売却したとすると、実際の利益は「80万円-50万円=30万円」であるにもかかわらず、「80万円-30万円=50万円」に対して課税されることになる。
この株を最初から一般口座・特定口座で購入していた場合、課税の対象は「80万円-50万円=30万円」となるわけだから、NISAを使わなかったほうがよかったという結果になってしまう。
このように、NISA口座で値下がりしたものを一般口座・特定口座に移管すると、税負担が増えてしまうことがある。
値上がり・値下がりで選択肢は決まってくる
こうしたことから、NISA口座で保有している株や投資信託を非課税期間終了時にどうするかは、値上がりしているか値下がりしているかによって選択肢がが決まってくる。
・購入時より値上がりしている
利益を確定したい→売却
非課税で保有し続けたい→NISA口座へ移管
・購入時より値下がりしている
今後の値上がりが期待できる→NISA口座へ移管
値上がりは期待できない→売却
一般口座・特定口座へ移管するのは、保有中の株や投資信託が値上がりしていて保有し続けたいがNISA口座では別の株や投資信託を購入したい、といったケースに限られるだろう。
NISA口座や一般・特定口座への移管について、具体的にどのような手続きが必要となるか、各金融機関が決定して発表するのは2018年夏ごろと見られる。
著者:馬養 雅子