公式コラムオカネの最前線
自宅を現金化するリバースモーゲージ
2018.02.19
著者:馬養 雅子
シニア世代には、資産のほとんどが自宅の不動産で、それ以外の金融資産があまりないというケースがある。そういう人が老後の生活費の不足を補ったり、リフォーム費用などを調達したりするのに利用できるのが「リバース・モーゲージ」だ。自宅を担保にして資金を借り入れる仕組みで、メガバンクや信託銀行、地方銀行や信用金庫など、取り扱う金融機関が増えてきている。
生前は利息の支払いのみ
住宅ローンや不動産担保ローンは元本と利息の両方を毎月返済していかなくてはならない。それに対してリバースモーゲージは、生きている間は利息だけ返済すればよく、亡くなったときに担保(自宅の土地)を金融機関が売却するなどして元本を返済するので、生前の返済の負担が軽い。中には、利息の支払いも死後でよい金融機関もある。
借り入れた資金の使いみちは、生活費やリフォーム費用に限定する金融機関と、使途を問わない金融機関がある。後者なら、旅行や趣味などのレジャー費に充てたり、医療や介護の費用、有料老人ホームの入居一時金などに充てたりすることができる。退職後に残った住宅ローンを一括返済して、月々のローン負担を軽くすることも考えられる。ただし、事業資金や金融商品の購入は対象外だ。
リバースモーゲージの商品内容は金融機関によって違いがあるが、自宅に一人あるいは夫婦で住んでいる人が対象で、年齢は55歳あるいは60歳以上というところが多い。年齢の上限は75歳から83歳までなど。
担保にできるのは基本的に自宅の土地で、融資限度額はその土地の評価額の50~60%程度。金融機関ごとに、取扱対象地域や物件の最低評価額などを決まっている。マンションを担保にできる金融機関もあるが、エリアが1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)などに限られる。
契約時に融資限度額あるいは利用可能額が設定される。その範囲であればいつでも借入ができるタイプと、決まった額を年1回受け取るタイプがある。
リバースモーゲージの3つのリスク
自宅に住み続けながら老後資金の不足を補えるのがリバースモーゲージのメリットだが、リスクもある。
1つは金利リスク。リバースモーゲージは変動金利であるため、契約後に市場金利が上昇すると利払いの負担が当初の想定より重くなる。
もう1つは地価下落リスク。担保にした土地の評価が下がった場合、亡くなった時に土地を売却してしても元本が返済しきれず、その差額を相続人が負担したければならなくなる可能性がある。
3つめは長生きリスク。思った以上に長生きすると、融資額が限度に達して借入ができなくなり、老後資金が不足することもありうる。
リバースモーゲージは最終的に自宅を手放すことになるので、子どもがいない人、死後に自宅を残す必要がない人に向いている。相続人がいる場合、リバースモーゲージを使うと相続人はその不動産を相続できなくなる。そのため契約にあたっては、推定法定相続人全員の同意が必要だ。
これからますます高齢化が進む中、リバースモーゲージは高齢者のニーズにマッチした金融商品といえるが、リスクもあり、仕組みも複雑なので、利用に際しては中身を十分に理解することが大切だ。
著者:馬養 雅子