公式コラムオカネの最前線
金融機関に属さず資産運用のアドバイスをするIFA
2018.03.19
著者:馬養 雅子
日本では通常、株や投資信託などの金融商品は金融機関で購入するのに対して、欧米では投資信託の7~8割がIFAを通して購入されているという。日本のIFAはまだあまり知られていないが、今後利用者が増えてくるかもしれない。
コンサルティングは無料
FAとは独立系ファイナンシャル・アドバイザーのこと。金融機関に所属せず、中立的な立場で資産運用のコンサルティングを行う。日本では内閣総理大臣から金融商品仲介業の認可を受けた個人や法人を指す。金融商品仲介業とはその名の通り、顧客と金融機関を仲介する業務で、IFAは1社または数社の金融機関と業務委託契約を結び、顧客に代わって金融機関に口座を開設したり、金融商品の売買注文を出したりする。
金融機関は顧客から売買手数料や投資信託の信託報酬を受け取り、業務委託契約に基づいてその一部をIFAに支払う。したがって、顧客からIFAへ手数料などを支払う必要はない。
IFAは売買の仲介だけでなく、顧客の運用アドバイスも行う。資産の状況やリスク許容度などをヒアリングし、それぞれの顧客にあったポートフォリオや金融商品を提案する。金融商品購入後も、経済状況の変化に応じてリバランスやポートフォリオの見直しなどを促したり、株価が大きく下落したときなどに対処法をアドバイスしたりする。
長期にわたって資産運用アドバイスが受けられる
金融庁は「平成27事務年度金融レポート」で、日本の金融機関について「短期的な利益を優先させるあまり、顧客の安定的な資産形成に資する業務運営が行われているとは必ずしも言えない状況にある」と指摘している。
手数料を目的に商品を次々に買い換えさせられたり、ノルマのために特定の金融商品を勧められたりした経験を持つ人は多いだろう。あるいは気づかないうちに、そうした営業を受けて金融商品を売買している可能性もある。中には良心的な営業職員もいるかもしれないが、異動があって長期につき合うことは難しい。
その点、IFAは金融機関に所属していないので、中立的な立場で顧客本位のコンサルティングができる。実際に、既存の金融機関への不信感からIFAを利用するようになった人もいるという。手数料の安いネット証券を利用したいが、すべて自分で判断しなければならないのが不安という人がネット証券会社と業務委託契約を結んでいるIFAを利用するのも一案だ。
異動がないのもIFAのメリットで、長期にわたってアドバイスを受けることができる。相続前の親の資産から相続後の子の資産へと、二世代にわたって運用アドバイスを受けることも考えられる。
富裕層向けのサービスとして、一般の証券会社では買えない海外の投資商品の仲介や、オフショアを利用した海外直接投資のアドバイスや援助、プライベートバンクの紹介などを行うIFAや、税理士法人と提携して、相続前後の資産活用コンサルティングを行うIFAもある。
運用ニーズの高まりで利用が広がる可能性も
1800兆円に上る日本の個人金融資産のうち半分以上が現金・預金で、株や投資信託の比率は15%程度にとどまっている。「貯蓄から投資へ」がなかなか進まない理由には、運用について相談できる相手がいないということもあるだろう。
一方で、金融資産の多くは60歳以上の人が保有しており、今後、相続によってそれらが次の世代へ移転してくると、運用のニーズはより高まり、アドバイスを求める人も増える。その流れの中で、IFAの利用が広がってくるかもしれない。
IFAは2003年に「証券仲介業」として登場し、2007年の法改正で「金融商品仲介業」に名称変更された。現在、金融商品仲介業の認可を受けた事業者は850あまりあるが、そのすべてが稼働しているわけではないようだ。稼働中のIFAも、引き受けられる顧客数が限られるので積極的に営業していないことがある。IFAを利用したい場合は、すでに利用している人に紹介してもらうか、IFAのホームページで探すことになる。
IFAとは長くつき合うことになるので、実際に会ってみて話を聞き、信頼できそうなIFAを選ぶとよい。
著者:馬養 雅子