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人気を集める「ファンドラップ」だが・・・

2018.05.28

著者:馬養 雅子

ラップ口座が人気を集めている。日本投資顧問業協会のまとめでは、2017年末時点のラップ口座の純資産総額が約7兆8800億円に上り、過去最高となった。

ラップ口座というのは、顧客と金融機関が「投資一任契約」を結び、金融機関が顧客の資産を顧客に代わって運用するサービスだ。金融機関は運用するに当たって、顧客のリスク許容度や投資目的などをヒアリングして資産配分を決め、それに基づいた運用プランを作って国内外の株や債券、不動産(REIT)などに投資する。

顧客は金融機関にラップ口座を開設してそこへ入金すると、あとはプロに運用してもらえる。資産配分を調整するリバランスや、経済状況などに合わせた資産配分の見直しなども任せることができる。

資産額が大きくて自分自身では運用しきれない人や、運用に時間をかけられない人、運用の知識がなくて自分では運用できない人などには便利なサービスといえる。

ラップ口座は、投資金額や投資目的などに合わせたオーダーメイドのサービス。最低契約金額は金融機関によって異なるが、5000万円あるいは1億円というところが多く、利用できる人は限られる。

それに対して「ファンドラップ」は最低契約金額が300~500万円程度。ファンドラップ用の投資信託(ファンド)がいくつか用意されていて、それを顧客のリスク許容度などに応じて組み合わせて運用する。退職金の運用などに利用できることから人気を集めており、ラップ口座の純資産総額を押し上げているのもファンドラップだ。

資産運用の経験のない人がまとまった額の退職金を受け取ってどうしていいかわからないとき、金融機関でファンドラップを勧められたら、Noとはいえないだろうことは容易に想像がつく。

だが、ファンドラップは金融庁が「問題アリ」としていることは知っておくべきだ。
金融庁は「平成27事務年度金融レポート」で次の2点を問題視している。

1つは運用コスト。投資信託はファンドごとに信託報酬(運用管理費用)がかかる。ファンドラップの場合それに加えて、資産運用残高に応じた投資一任報酬という手数料が上乗せされる。「金融レポート」では、信託報酬は年間で平均1.5%程度なのに対して、ファンドラップを利用すると平均の手数料が年2.2%だとしている。

資産を運用するとき、手数料は運用成果に大きな影響を及ぼす。「ファンドラップの手数料が提供されるサービスや運用成果の対価として適正であるか確認することが重要」と金融庁は指摘している。

もう1つの問題点は、運用対象とする投資信託。金融機関がファンドラップ用に提供している投資信託を見てみると、系列の投資信託運用会社が設定しているものが多くを占めている。「顧客のために、本当に優れた投資信託を提供しているのかどうか疑問」というわけだ。実際にファンドラップ用の投資信託を見てみると、必ずしも運用成績がよいとはいえない。

リスク許容度に合わせた資産配分を無料で提示してくれるサービスは、ネット上にたくさんある。それに合わせて各資産のインデックスファンドを自分で買えば、ファンドラップを使わずにすみ、手数料を節約できる。
ファンドラップは顧客にとって無用のサービスといえるのではないだろうか。

著者:馬養 雅子