公式コラムオカネの最前線
50代、60代でも“つみたてNISA”は有効か
2018.07.23
著者:馬養 雅子
今年から投資に対する新しい非課税制度“つみたてNISA”がスタートした。「貯蓄から投資へ」を促進し、特に若年世代の資産づくりを支援するためのものだが、50代、60代でも利用するメリットはあるのだろうか。
投資信託の積立購入専用の非課税制度
まず、つみたてNISAの仕組みを確認しておこう。
その名前のとおり、投資信託の積立購入専用のNISA(少額投資非課税制度)で、金融機関につみたてNISA専用の口座を開設し、そこで積立購入した投資信託については、通常なら売却益や分配金にかかる約20%の税金が非課税となる。1年間に積立購入できるのは40万円まで、非課税期間は20年間だ。
一般のNISAは、投資信託のほか上場株式やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)も購入でき、年間購入額は120万円まで、非課税期間は5年。つみたてNSIAはNISAより非課税枠は小さいが非課税期間が長い。
つみたてNISAの対象となる投資信託は、ノーロード(販売手数料無料)で、信託報酬(運用管理費用)が一定以下などの条件を満たした投資信託とETFに限られ、その数は2018年7月3日現在、152(うちETFが3)となっている。
つみたてNISAで老後資金づくり
つみたてNISAは、若い世代が20年間の非課税期間を使って老後資金を作るのに適した制度といえるが、50代、60代でも、老後資金づくりに活用できる。むしろ、50代、60代は本格的に老後資金づくりをする必要があるし、現役中は老後資金づくりの最後のチャンス。これまで預貯金しか利用してこなかったという人もつみたてNISAを活用したい。
つみたてNISAの対象はおもにインデックスファンドなので、同じ指数に連動するものならどのファンドでも運用成績に差がなく、ファンド選びで迷ったり失敗したりしなくてすむ。
投資信託は元本保証ではないが、長期間積み立てると、購入タイミングが分散されて値動きの影響を受けにくくなる効果が期待できる。また、値上がりしたときは買える口数が少ないが、値下がりすると買える口数が多くなるため、値下がりもメリットになる。
年間40万円までだと、1カ月あたり3万3000円積み立てられる。10年積み立てれば元本だけでも400万円になる。すでにある程度の預貯金がある人なら、非課税枠を目いっぱい使うとよい。預貯金があまりない人は、年金財形など元本確保型の金融商品とつみたてNISAを組み合わせるとよいだろう。
一般のNISA終了後につみたてNISAへの切り換えも
すでにNISAを利用している人はどう考えたらよいだろうか。
NISAとつみたてNISAは同一年では併用できず、どちらかを選択することになるが、例えば来年からつみたてNISAに変更したとしても、現在NISAで保有している株や投資信託等は、購入してから5年間は、非課税のまま保有できる。
今後も株やREITなどを購入する場合や、投資信託を年間40万円以上購入する場合、今あるまとまった資金を非課税で運用したい場合などは、NISAを利用することになる。NISAで新規の購入ができるのは2023年までなので、その後つみたてNISAに切り替えてもよいだろう。
あるいは、夫婦のどちらかが一般のNISA、どちらかがつみたてNISAと使い分けるという方法もある。
いずれにしても、約20%の税金がかからないというメリットは非常に大きい。50代、60代でも、というより、50代、60代こそ、つみたてNISAあるいはNISAを活用して老後資金作りにラストスパートをかけたい。
著者:馬養 雅子