公式コラムオカネの最前線
不動産小口化商品とJ-REIT
2018.11.05
著者:馬養 雅子
不動産による資産運用に興味を持つ人は多い。保有不動産を賃貸すれば、賃料が“不労所得”となって経済的なゆとりを生むのは確かだ。だが、賃貸経営に空室リスクはつきもの。それを避けるには慎重に物件を選ばなければならないし、優良な物件を購入するにはまとまった資金が必要だ。賃貸経営には管理業者への委託手数料や固定資産税、火災保険料、修繕費などのコストがかかり、空室が生じると赤字経営に陥る可能性もある。
こうしたリスクや手間を考えたとき、不動産による資産運用を、現物ではなく金融商品で行うことも選択肢となる。
不動産小口化商品は相続対策にもなる
その1つが、不動産特定共同事業法に基づいて設定されている不動産小口化商品だ。このうち「任意組合型」の場合は、事業者がオフィスビル、商業ビル、賃貸マンションなどを取得し、その共有持ち分を小口化して投資家に販売する。1口1000万円、あるいは1口100万円で購入できるものが多い。物件ごとに出資者を募る形になっており、運用期間は10、15年、30年など。
現在募集中のある物件は東京都内の賃貸マンションを対象とし、1口100万円で運用期間は30年。年2回分配で予想分配利回りは3.7%となっている。分配金は不動産所得となるので、原則として確定申告が必要だ。
小口化商品は相続税対策としても利用できる。購入すると、キャッシュが不動産に置き換えられて資産が圧縮されるからだ。また、1口単位で生前贈与することも考えられる。
ただし、小口化商品でも空室リスクや賃料下落リスクがある。事業者への依存度が高いので、業者選びも重要になってくる。
REITなら少額での投資が可能
もっと手軽に不動産に投資できるのがJ-REIT(ジェイリート)だ。REITは不動産のみに投資する不動産投資信託のことで、それにJapanのJをつけてJ-REITという。REITは、“不動産投資法人”が投資家から集めた資金と金融機関からの借入金で複数の不動産を購入し、それを賃貸して得られた利益を投資家に分配する仕組みだ。形は投資信託だが、証券取引所に上場しているので、株と同じようにいつでも売買できる。
2018年10月現在、61銘柄が上場しており、最低投資可能金額は、安いもので数万円、高いもので70万円程度。ほとんどが年2回分配で全銘柄の平均利回りは4%程度となっている。
株式会社の場合、利益に対して法人税がかかる。また、利益すべてを配当するわけではないのに対し、J-REITは収益の90%超を分配すると法人税が免除されるため、投資家は現物不動産を保有している場合と同じように、収益のほぼすべてを分配金として受け取ることができる。
J-REITの銘柄を保有物件タイプで見ると、オフィスビル、賃貸マンション、商業施設、物流施設、ホテルなどに特化したタイプのほか、これらを組み合わせたタイプもある。最近は、有料老人ホームなどの高齢者施設に特化したタイプも登場している。
どの不動産投資法人も複数の不動産を保有しており、収益性の高い物件への買い換えも行うので、現物不動産や不動産小口化商品に比べて空室や賃料下落の影響を受けにくく、投資家が物件を選ぶ必要もない。
J-REITはNISA(少額投資非課税制度)の対象なので、年間120万円までの購入であれば、分配金を非課税で受け取れる。NISAを利用しない場合でも、特定口座なら税務関係の手続きは不要だ。
“不動産投資”というと現物不動産への投資をイメージしがちだが、金融商品でも不動産に投資することができる。特にJ-REITは、少ない資金で複数の不動産に分散投資が可能で、現物への投資に比べて手間がかからずリスクも小さい。不動産への投資を考えるなら、J-REITを積極的に活用してみてはどうだろう。
著者:馬養 雅子