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新法施行で“休眠預金”は払い戻されなくなる?

2019.04.22

著者:馬養 雅子

たいていの人は銀行口座を複数もっているはず。その中にはほとんど使っていないものもあるだろうし、口座があることすら忘れているケースもあるかもしれない。長期間お金の出し入れのない“休眠預金”は、毎年700億円にものぼるとされる。そのお金を公共の目的のために有効活用することを定めた「休眠預金等活用法」が2019年1月1日に施行された。

10年以上放置された預金が対象

休眠預金とは、入手金などの「異動」が10年以上ない預金等のことをいう。各金融機関は、最後の取引から10年以上たっている預金のうち、残高が1万円以上の預金について、2019年1月以降に預金者に預金等の存在を通知し、預金者等の住所等が確認できない預金については、ホームページで公告したうえで、預金保険機構に移管する。この通知は郵送のほか、電子メールで送られることもある。

通知が届いた場合や、預金者から問い合わせがあった場合は、それが「異動」と認められて、預金保険機構への移管は行われない。残高が1万円未満で10年以上異動がないものは、自動的に預金保険機構へ移管される。移管された資金は民間の公益活動に利用されることになっている。

休眠預金等活用法ができたことによって10年以上たった預金が払い戻されなくなる、というわけではない。休眠預金となって預金保険機構へ移管されると、ATMでの引き出しはできなくなるが、通帳や預金証書、キャッシュカードなど口座番号がわかるものを持って銀行の窓口へ行けば、いつでも引き出しは可能だ。通帳やキャッシュカードを紛失してしまった場合でも、本人確認ができるもの(運転免許証など)があれば、口座や残高を調べてもらえる。
休眠預金となっている預金を引き出した場合、元本とともに、それまでの期間分の利子も支払われる。

休眠預金等活用法でいう「預金」とは、普通預金、定期預金、貯蓄預金など預金保険の対象となるもののことで、外貨預金や財形貯蓄など預金保険の対象でないものは休眠預金になることはない。
また、入出金は「異動」と認められるが、通帳記入や残高照会を「異動」とみなすかどうかは銀行によって異なる。

民営化前に預け入れた郵便貯金は権利消滅も

注意したいのは郵便貯金だ。郵政民営化(2007年9月30日)以前に預け入れたもののうち、定額貯金、定期貯金、積立貯金など満期のあるものは、そのままにしておくと満期から10年後に通知が届き、さらに10年後に催告書が届いて、それから2カ月後に払い戻しの権利が消滅する。引っ越しなどで住所が変わり通知が届かない場合、知らない間に権利が失われているということもあるので、郵便貯金を利用していた人は通帳を確認したり郵便局に問い合わせたりしよう。

通常貯金は長期間取引がなくても、いつでも引き出しが可能。民営化以後に預け入れたものは、一般の銀行の預金と同じ扱いになる。

この機会に口座の整理を

10年以上入出金がなくても、銀行からの通知が受け取れれば休眠預金にはならないし、休眠預金になったとしても払い戻しは受けられるので、過度に心配する必要はない。とはいえ、長期間入出金がないのなら、その口座は不要といえる。口座が多いと資産が分散して管理が大変になるし、不正な引き出しが行われても気付きにくい。また、万一のとき、家族が把握できない可能性もある。この機会に、メインの口座とサブの口座を決めて、それ以外の口座は整理するとよい。

「新しい法律によって預金が引き出せなくなる」などといって通帳やキャッシュカードを郵便で送らせたり、キャッシュカードの暗証番号を電話で聞き出したりする“休眠預金詐欺”が出てくるかもしれない。こうした手口にはくれぐれもひっかからないよう注意してほしい。

著者:馬養 雅子