公式コラムオカネの最前線

生命保険会社が力を入れる“健康増進型保険”

2020.04.13

著者:馬養 雅子

日本人は“保険好き”といわれる。実際に加入率は80%を超えており、保障を必要としている人はほとんど、すでに保険に加入していると考えられる。その中で、新たな分野としていくつかの生命保険会社が力を入れているのが「健康増進型」の保険だ。

健康な人は保険料が安くなる

保険商品の中には、たばこを吸わない人に「非喫煙体(ノンスモーカー)割引」、健康な人に「健康体割引」を適用して保険料を割り引くものがある。保険商品の種類としては、収入保障保険が多い。

非喫煙体割引は過去1年間(保険会社によっては2年間)たばこを吸っていないことが条件。健康体割引は、最高血圧と最低血圧、BMIが一定の範囲内であることが条件となっている。BMIとは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って肥満ややせすぎを見る指標だ。

非喫煙体や健康体でどの程度保険料が割り引かれるかは、保険会社や保険商品によって異なるが、健康体・非喫煙体、健康体・喫煙体、標準体・非喫煙体、標準体・喫煙体の4パターンの保険料区分がある収入保障保険では、健康体・非喫煙体と標準体・喫煙体で保険料が年間1万円以上違うケースがある。

たばこを吸わない人や健康に自信がある人は、保険の見直しや新規の加入の際に、こうした割引のある保険を調べてみるとよい。保険料は保険会社のサイトで試算できる。
たばこを吸う人や健康に自信がない人は、こうした割引のない商品のほうが保険料が安いことがある。

健康状態に応じて保険料割引やキャッシュバック

最近はそれよりさらに一歩進んで、保険に加入したあとに健康状態がよくなった場合、保険料が安くなったりキャッシュバックが受けられたりする「健康増進型」の保険が登場している。形としては、主契約である医療保険や組立型保険などに、健康増進に関する特約を付帯する形になる。健康増進特約の特約保険料は無料のケースと、毎月数百円かかるケースがある。

健康状態のチェック方法は、健康診断の結果を保険会社に提出するケースが多い。スマートフォンに専用アプリをダウンロードして、歩いた歩数を毎日計測するという商品もある。健康診断の結果が一定の条件を満たしていたり、1日の平均歩数が一定以上だったりすると、キャッシュバックや保険料の割引が受けられる。

大手生命保険会社の商品の場合は、健康診断結果の提出のほかに、スマホによる健康状態のオンラインチェック、スポーツイベントへの参加、フィットネスジムの利用、日々の歩数や心拍数によってもポイントが付与され、獲得したポイントに応じて提携している会社のサービス、例えば、スポーツ用品購入やフィットネスジムの利用などで割引が受けられる。

健康増進特約は「おまけ」

健康増進型の保険に加入することで健康意識が高まり、実際に健康の増進につながり、さらに保険料が安くなるなら契約者にとって悪い話ではない。大手生命保険会社が行った健康増進型保険の契約者へのアンケートでは、「契約前に比べて健康を意識するようになった」といった声が寄せられているという。
契約者が健康であれば保険金・給付金の支払いが少なくなるので、保険会社にとってもプラスだ。

健康増資型保険は契約者にも保険会社にもメリットのある商品といえそうだが、だからといって健康増進型に加入する必要はあるだろうか。

保険に加入するとき、最も大切なのは保障内容と保険料であり、健康増特約はあくまで「おまけ」と考えるべきだろう。
今、保険を必要としていて、保障内容が自分に合っていて保険料が他の商品に比べて安いという保険商品があったとき、それに健康増進特約がついているなら、加入しても構わない。しかし、他の商品ほうが保障内容が充実していて保険料が割安なら、あえて健康増進型を選ぶ意味はないだろう。

著者:馬養 雅子