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NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAはこう変わる
2020.05.11
著者:馬養 雅子
NISA(少額投資非課税制度)は、2014年にスタートして新規投資は2023年までとなっていたが、2020年の税制改正で2階建ての形に変わり5年延長されることになった。つみたてNISAも5年延長されるが、ジュニアNISAは予定通り新規投資が2023年で終了する。
3つのNISAの変更点を整理しておこう。

NISAは2階建てに衣替え
上場株式等から得られた利益には通常、約20%の税金がかかるが、金融機関にNISA専用の口座を作ってそこで購入した場合は、売却益、配当、分配金等が非課税になる。対象となる金融商品は上場株式、株式投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など。NISA口座で1年間に購入できる金額は当初は100万円だったが、2016年からは120万円になっている。
NISAの非課税期間は最長5年で、新規に投資できるのは2023年までだったが、2024年からは2階建ての新NISAに衣替えし、5年間延長。2028年まで投資できることになった。
新NISAの1階部分は、一定の条件を満たした株式投資信託の積立のみが可能で、対象となる投資信託は現在のつみたてNISAと同じ。年間の非課税限度額は20万円だ。2階部分はそれまでのNISAと同様に上場株式や株式投資信託が対象だが、整理銘柄や高レバレッジの投資信託など、投機的な取引につながるものは除かれる。年間の非課税限度額は102万円。
2階部分は1階部分と併用する場合にしか利用できない。つまり、上場株式等を非課税で保有するためには、低コストで長期投資に適した投資信託の積み立てが必須ということになる。ただし、投資経験者、具体的には2024年1月1日より前に上場株式等の取引を行ったことのある人や非課税口座を開設していた人は、1階部分を使わなくても上場株式のみ2階部分で購入することができる。
NISAから新NISAへのロールオーバーは可能
NISAでは5年間の非課税期間の終了時に、口座にある上場株式や株式投資信託等を翌年の非課税枠へ移管(ロールオーバー)することができる。その際、その時点での時価が取得価格となり、ロールオーバーするとその分非課税枠を使うことになる。
NISAから新NISAへのロールオーバーも可能だ。
例えば、ロールオーバーする上場株式等の前年末の価格が80万円だとすると、新NISAの102万円の非課税枠のうち80万円を使うことになり、その年に新規購入できるのは22万円までということになる。
価格が120万円だった場合は、非課税枠を全部使うことになり、それを超えた18万円は1階部分の非課税枠を使うことになって、その年は1階部分の残り2万円のみが利用できることになる。
(NISAのロールオーバーについては、「5年目を迎えるNISA (http://souzoku-jigyoushoukei.com/posts/1861)」参照)。
つみたてNISAは5年延長
2018年にスタートしたつみたてNISAは、一定の条件を満たした、低コストで長期投資に適した投資信託の積立購入専用のNISAで、年間40万円まで投資でき、20年間非課税で保有できる。個人の長期資産形成に資するものとして恒久化が望まれてきたが、今回は期間が5年延長されるにとどまった。新規の投資ができるのは2042年までとなる。
ジュニアNISAは廃止されるが使い勝手は向上
NIISAが利用できるのは日本に居住する20歳以上の人であることから、20歳未満の人が利用できるジュニアNISAが2016年に導入された。非課税期間や投資できる金融商品はNISAと同じだが、年間の非課税限度額は80万円だ。
非課税期間もNISAと同じ5年間だが、それを過ぎても契約者が20歳になるまでは非課税で保有できる。ただし払い出し制限があり、ジュニアNISA口座にある株式の売却代金や配当等は、投資者が18歳である年の前年の12月31日まで引き出すことができない。もし引き出した場合は、過去の売却益等に課税される。
子どもが高校を卒業する年の前年末まで引き出せないということは、ジュニアNISAが教育費でもっともお金のかかる大学進学費用を準備するものと位置づけられていると考えられる。だがこの仕組みだと、特に小さい子どもが利用する場合、長期間にわたって資金が自由に使えないことになる。
こうしたことからジュニアNISAは利用が伸びず、当初の予定どおり口座開設と新規投資は2023年12月31日で終了することになった。それととともに、2024年1月1日以降は払い出し制限が解除されることになり、18歳である年の前年末までに資金を引き出しても課税されなくなった。これによってジュニアNISAは使いやすくなったといえる。今から口座を開設し、積立投資をして教育資金づくりをするのもよいかもしれない。
なお、成年年齢の引き下げに伴い、2023年1月1日以降、NISAとつみたてNISAが利用できるのは18歳以上、ジュニアNISAが利用できるのは18歳未満となる。
著者:馬養 雅子